ブログ内容の変更について
2年放置でも生存可能な多肉植物
※一部、論文を誤読しておりました。訂正してお詫び申し上げます(20191210追記)。
もう気が付いた今年もあと3週間ですね。
今年はブログ・Youtubeを始めたので、個人的には躍進した年だと思います。
来年はもっとブログ・Youtubeに力を入れて、1つの収入減に依存しない生活を目指して頑張ります。
なんか、年末の挨拶みたいになりましたが・・・
今回も屋上緑化などに使われるグランドカバータイプのセダムを科学します。
↑ 今回の主役
屋上緑化の研究では高温・低温・乾燥・強光に対する品種間差をみる研究が多いようですが、久しぶりに論文を熟読していると面白いデータを見つけました。
その結果がこちら ↓
ミシガン州立大学の行った研究によると草本植物は養分(N,P)を少なくした方が、厳しい環境での生存率が上がるという結果が出ています(多肉植物ではないのが残念)。
多肉植物を2品種、多肉植物以外の植物を3品種を潅水後、800日間自然に降る雨のみで生育させたところ、1年目までは多肉植物以外が栄養源が少ないにもかかわらず、多肉植物に比べ有意に生長したという結果が得られました。
しかし、400日以降は多肉植物以外の品種は枯死し、多肉植物が生存し続けました。
つまり、約2年半はほったらかしでも生存可能であることが証明されました。
D. Bradley Rowe et. al., 2006. Assessment of Heat-expanded Slate and Fertility Requirements in Green Roof Substrates. Hortechnology 16(3)
https://pdfs.semanticscholar.org/6e08/5dce151ea402589ff0e40f9466925da39d73.pdf
ちなみに厳しい環境というのが高温・低温・乾燥・強光などです。
化学分析などはおこなわれていませんでしたが、論文によると「少ないエネルギー消費を維持している」という見解でした。
P.S. Youtubeもやっているので、見ていってください
https://www.youtube.com/channel/UCYnSvB5VIqiHv62M8VaKxbA/
P.S.P.S.内容に20191209に投稿したブログにミスがあり、申し訳ありませんでした。
重ねてお礼申し上げます。
多肉植物の冬越しを科学する
冬は曇天が続くから嫌なんです。。。(´・ω・`)=3
今回は多肉植物が冬(低温)に対してどういう反応を示すのか、科学的な視点で見ていきます。
「うぁ!可愛く紅葉してる(*‘ω‘ *)✨」
で、終わらないのが、「多肉植物を科学する」ブログの醍醐味です。
順化(harding)
低温で植物がどういう反応を示すかを考えるために、「順化」という概念を理解しておくとわかりやすいかと思います。
順化とは
植物を急激な環境の変化に慣れさせるために行う、軽度のストレス処理
のことです。
植物がストレスと感じる要因は
・温度:急激な低温または高温
・湿度:周囲の空気の急激な乾燥または過湿
・呼吸:根の酸欠
・接触:根の切断。葉や茎を触る。
・pH:極度に高いまたは低いpH
・光:急激な強い光
・水:肥料濃度が高すぎる。塩水(NaCl)を与える。水を与えない
などです。
実際の順化の例
「ポットからプランターに植え替える際、潅水を少なめにして、植物にとって軽度のストレスをあたえる」
この場合、水を少なくすることで、ストレス耐性を上げ、植え替えによる根の切断
参考文献(一部改変)
日本光合成学会
http://photosyn.jp/pwiki/index.php?%E9%A6%B4%E5%8C%96%28%E9%A0%86%E5%8C%96%29
低温耐性
セダム属はどうやらかなり低温に強いようです。
以前のブログでも紹介しましたが、
Sedum ‘Autumn Joy’は-27℃でも順化させていけば、耐えるようです。
ニジノタマ(Sedum × rubrotinctum)も同様に-27℃までは耐えるという結果が出ています。まあ、あくまでも順化させた場合です。急激な温度変化に耐えられず、凍結により「絶える」こともあります。
上記の論文で、低温耐性が上昇した理由は「水分量の減少と低温耐性の上昇には相関関係がある」という解説でした。
(Brule-Babel and Fowler, 1988;Metcalf et al., 1970; Nass, 1983; Siminovitch and Cloutier, 1982; Tyler et al., 1981; Willemot and Pelletier, 1979), Medicago sativa L. (alfalfa) (Stout, 1980), turfgrass (Gusta et al.,1980), and woody plants (Levitt, 1980)
セダム属が低温に強い理由
正直、はっきりとしたことはわかりませんが、セダム属と他の多肉植物との形態的に大きく異なる点は、①鉛直方向に伸びない、②根が浅いという2点がヒントになるのかもしれません。
今回は植物の「順化」についてまとまられているサイトがなかったので、長々ご説明しましたが、これからのPlant-Lifeに役立つと思います✨
P.S. アドセンスをパスできたので、頑張って更新していきます。
多肉植物の紅葉を科学する-2
前回に引き続き、今回も多肉植物の紅葉を深堀していきます。
↑ 写真を使いまわしのニジノタマ
前回 ↓
そもそもなぜ緑に見える?
そもそも葉っぱが緑に見えるのは葉緑体のチラコイド膜に存在しているクロロフィルという色素が可視光の495~570nmの波長を反射しているので、緑に見えます。この緑に反射させている色素がなくなり、残っている黄色の色素(カロテノイド)や赤の色素(アントシアニン)が反射して、黄色や赤に見えるようです。
参考文献
https://www.geolab.jp/science/2002/11/science-005.php
ここからは私の仮説
多肉植物の紅葉を研究した論文が見つかりませんでした。。。orz
一般的な葉の紅葉は「葉緑体にあるクロロフィルが分解されて、紅葉する」で説明がつくようですが、多肉植物の紅葉は赤くなったあと気温が上がれば、緑にもどる現象がおきます。
なので、季節性の紅葉とは仕組がことなる。 と考えました。
また、多肉質の葉の中は何色なのか、という疑問が浮かびました。
研究の最も大事なことの1つ:観察する
という原点に立ち返り、紅葉した多肉植物の葉を切ってることにしました。
多肉断面図
左:胡蝶の舞、右上:ルビーネックレス、右下:ニジノタマ
写真を見てわかるように、外はカリッっと、中はもちもち
外は赤紫色、中は緑のままでした。
仮説
赤紫に見えるアントシアニンという色素は抗酸化物質としてはたらくことが知られています。低温ストレスでアントシアニンを集積が起こり、低温から身を守ることができる。と考えました。
低温で凍ってしまう多肉植物は冬でも緑のままである傾向が強いように思えます。
この紅葉メカニズムの仮説を立証するには
・赤紫色になる多肉とならない多肉のアントシアニン濃度の測定
が必要でしょう。
結局、確かなことはわかりませんでした。
参考文献
Paolo Rapisarda et al ., Effect of cold storage on vitamin C, phenolics and antioxidant activity of five orange genotypes [Citrus sinensis (L.) Osbeck]. Postharvest Biology and Technology 49 (2008) 348–354
P.S. ようやくアップできました(;'∀')
人工的にニジノタマを作る
さ、さ、さ、寒い。
今日はニジノタマを人工的に作る方法をご紹介します。
材料
・どこの家庭にもない酸化銅(1):Cu2Oです。
酸化銅(1):Cu2Oを結晶化させると
あら不思議!
10µm程度のニジノタマが出来上がりました。
詳しい作り方(参考文献)
Lu-feng Yang et al. 2016. Microemulsion-mediated synthesis of sedum rubrotinctum shaped Cu2O architecture with efficient sunlight driven photocatalytic activity. RSC Adv,2016, 6, 960-966
https://pubs.rsc.org/en/content/articlehtml/2016/ra/c5ra24559a
論文にたどり着いた経緯
「ニジノタマ 学名」で、ニジノタマの学名「Sedum × rubrotinctum」(ちなみに「属名×名前」が学名の種は交配種です。)をコピペしていつものようにグーグルスカラーで調べようと、片っ端から「Sedum rubrotinctum」がタイトルについている論文を読んでいました。
そこで偶然出くわしました。
セレンディピティ
半導体工学の用語がたくさん出てきて「???」ってなっていると、「あ、仕事でよく見る用語だ」となったため、内容が理解できました。「植物×工学」の意外な接点ができてinterestingでした。
やっぱり科学って面白い。
番外編:植物解説動画のご紹介
こんにちは。すっかりさむくなりましたね。
低血圧なので、寒くなると起きるのがつらいです。
ブログの更新頻度がだだ下がりで申し訳ありません(-_-;)
その代わりに最近、Youtubeに力を入れるようになり、植物の解説動画を作成しております。
現在は主に観葉植物の解説動画が中心ですが、今後は多肉植物の解説動画も作成予定です。
リンクはこちら ↓
https://www.youtube.com/watch?v=Hxsitv8fHOU
余談ですが、お気に入りのニジノタマが高揚したので、UPしておきます ↓
本日は以上。
追記:最近Youtubeやっていたのと、Google Adsenseをパスできなくて四苦八苦しておりました(;'∀')
多肉植物の紅葉を科学する-1
私は11月に入り、衣替えおよび、カーペットの準備を済ませました。
皆さまの多肉植物も紅をさし始めてくるころだと思います。
そこで、今回は多肉植物の紅葉について、科学します。
やはり、多肉植物の紅葉について調べた論文はありませんでした。
なので、科学研究を進める手法としてよくやるのが、
類似の現象がないか?
を調べます。
手始めに、多肉植物以外の紅葉について調べることにします。
葉の老化
葉が老化すると起きること
・葉が老化して光合成効率が低下
・再転流※1後の脱落
葉の老化の類似現象
・動物のアポトーシス※2
・PDC(proglammed cell death)※3
・オーソログ※4
と似ているが、現象が起きる過程は全くちがう。
2003年までの10年間において、葉の老化はシロイヌナズナ(モデル植物:雑草)や一年生の植物で調査され、老化の遺伝子や老化細胞のメカニズム解明が主であった。
葉の老化した結果、起きている生理現象
今回は紅葉でググった結果、一番最初にヒットした文献のイントロダクション部分を引用しました。
引用文献
Rupali Bhalerao, Johanna Keskitalo, Fredrik Sterky, Rikard Erlandsson, Harry Bjorkbacka,Simon Jonsson Birve, Jan Karlsson, Per Gardestro¨m, Petter Gustafsson, Joakim Lundeberg, and Stefan Jansson (2002) Gene Expression in Autumn Leaves, Plant Physiology, Vol. 131, pp. 430–442
用語解説
※1 再転流
植物体において光合成産物や栄養塩類などがある器官・組織から他の器官・組織に輸送されることを転流という。再転流はある器官が不要になった際、光合成産物や栄養塩類などが他の組織へ移動して、再利用されること。
参考:光合成辞典(http://photosyn.jp/pwiki/index.php?%E8%BB%A2%E6%B5%81) 一部改変
※2 アポトーシス
アポトーシス (apoptosis) とは、多細胞生物の体を構成する細胞の死に方の一種で、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自殺すなわちプログラムされた細胞死。
引用: Wikipedia
※3 PCD(Programmed cell death)
プログラム細胞死(プログラムさいぼうし、英: Programmed cell death, PCD)は多細胞生物における不要な細胞の計画的(予定・プログラムされた)自殺である。組織傷害などで細胞死を起こす壊死と異なり、一般にはPCDは生物の生命に利益をもたらす調節されたプロセスである。
引用: Wikipedia
※4 オーソログ
生物に存在する相同な機能を持った遺伝子群。種分化の過程で生じたものである。
引用: Wikipedia
※5 ゲロントプラスト(gerontoplast)
ゲロントプラストは、老化した後のかつて緑色だった葉で見られる色素体である(老化葉緑体)。ゲロントプラストは、葉緑体が成長、老化の過程で再利用されたものである。
引用: Wikipedia、参考:植物生理学会ーみんなのひろば