植物を科学する

植物に関する科学的な知見の解説および論文紹介

冬の多肉管理を解説

あけましておめでとうございます。家庭の事情でブログの更新が停滞しておりました・・・

言い訳はさておき今日は冬の多肉植物の管理について解説します

 

1月~2月にかけて、平野部でも最低気温が0℃を下回ることがこれからの時期、増えてきます。そこで今回は、冬の多肉植物の管理について解説します。

以前のブログで、「植物の冬越しには、『馴化が必要』」とお話ししました。

botanist123.hatenablog.com

 

いくら乾燥に強い多肉植物でも急激な環境変化は良くありません。特に熱帯性から亜熱帯性が原産、つまり暖かい地域が原産の多肉植物はあまり寒さに強くありません。一方で-27℃くらいにすら耐える、多肉植物も存在します。

 

今回は冬に日本の屋外で多肉植物を管理するために絶対に避けるべき3つのことを解説していきます。これから説明することさえ避ければ、冬越しできるので、ぜひ皆さんも知識としてインプットしてください。

では早速解説していきます!

 

 

1-「放射冷却

明け方に気温が下がる現象です。条件が揃えば、放射冷却で、多肉植物全てが凍って、死んでしまう可能性があります。

放射冷却」は晴天で風のない明け方に太陽がのぼり、地上の空気が暖められ、軽くなって空気が上昇し、地温が奪われる現象です。1~3月は著しい気温の低下が起こり、霜や路面凍結などの冷害が起こります。この時の温度低下は5℃~8℃程度と言われています。数時間で5℃の気温の低下が起こると、アスコルビン酸やペルオキシダーゼなどの、抗酸化物質や細胞の凍結を防ぐ、不凍性タンパク質(AFP)の合成が追い付かず、細胞が凍結して、再起不能になってしまいます。特に水分の多い、葉が凍ってしまいます。

 

こんな感じ↓になってしまいます。

https://www.instagram.com/p/B7I-ngdlzKY/

冬を越せない多肉植物

 

しかし、比較的水分が少ない茎までダメージが及んでいない場合もあるので、あきらめずに暖かくなるまで待ってみてください。奇跡的に復活するかもしれません。

 

2ー「低温耐性が低い多肉植物の屋外管理」

多肉植物は主に熱帯から亜熱帯原産が多いです。それらの多肉植物はそもそも屋外で管理するのが非常に難しいため、外に出さないことが重要です。

 多肉植物には低温耐性が低いものと、高いものがあります。

そもそも「低温耐性が低い」というのは寒さに弱いということです。特に熱帯から亜熱帯原産の多肉植物は寒さに弱いです。一方、原産地が温帯から亜寒帯、山岳地帯が原産の多肉植物は寒さに強いものが多いです。

具体的な属名をあげると、セダム、センペルビウム、などはどの品種でも耐寒性は高いです。また、葉が真っ赤に紅葉する、エケベリアカランコエなども寒さに強い傾向があります。考えられる一般的な理由は、

・葉の表面をアントシアニンなどの抗酸化物質で覆うことで低温ストレスを緩和している

・不凍性たんぱく質(AFP)の合成により細胞の凍結を防いでいる

・糖類の蓄積により細胞内水分の凝固点を下げている、                                        

などが考えられます。

 

3ー「夕方に水をやる

潅水を温度が下がる時間帯に行うと、凍ってしまうリスクが上がります。

夕方に水をあげてしまうと、夜間から明け方にかけて温度が下がり、水が凍ってしまいます。凍結により根そのものが凍る危険性があります。また、根の周辺の水分が凍り、水を吸うことができず、呼吸もできなくなります。言わずもがな、夕方の水やりは止めましょう。

冒頭に-27℃に耐える植物があるといいましたが、あれは、セダム属で、有名な品種だと「ニジノタマ」なんかも低温にはかなり強いです。詳細は過去ブログで解説しています。

botanist123.hatenablog.com

 

余談

ちなみに、不凍性たんぱく質(AFP)は馴化させるときに、細胞壁を充填しているアポプラストというゲル状の充填物質のタンパク質を凍らせることで細胞質を保護する働きがあるそうです。

あと、凍結の説明に飛躍があることに気が付いたんですが、抗酸化物質がどのような機構で、凍結を防ぐのか説明できてないので、今後、調べてみます。

 

まとめ

1-放射冷却を避ける

2-低温耐性が低いタイプは部屋で管理する

3-夕方の水やりは止める

小型のビニールハウスなども市販されています。

 これを使えばある程度、低温は回避できます。お金とベランダのスペースに余裕のある方はアマゾンで2000円くらいで買えるみたいなので検討してみて下さい。

 

動画解説

今回の記事は動画でも詳しく解説していますので、耳から効きたい方はYoutubeをご参照ください↓

https://www.youtube.com/watch?v=WJxnkAStL8A&t=1s

 

参考文献

Marilyn Griffith et al., (1992) Antifreeze Protein Produced Endogenously in Winter Rye Leaves Plant Physiol.100, 593-596