植物を科学する

植物に関する科学的な知見の解説および論文紹介

多肉植物を育てるために「いきなり直射を日光をあてるのがNG」な科学的理由

先日、週2回の更新にしよう!

 

と宣言したので大幅に更新頻度を下げました。

言い忘れておりましたが、読むのが面倒臭い方は太字だけ読めばタイトル回収できるようになっています。

 

ネタを上手く揃えられ、尚且つ、私の専門知識を発揮できることを見つけたのご紹介します。

 

今週、ブログ村

「花・園芸ブログ ランキング」

におけるトップの方のブログを拝見しておりました。

 

その中で、「葉を焦がしてしまった・・」

との記載があったので、ランキングトップの方でも、葉焼け回避ができていないことがわかり、

 

「これだ!(*‘∀‘)」

 

と思いキーボードを叩くことにしました。

主は「どやーー(*‘∀‘)!!!」って感じの顔をしたと思います(笑) 

 

 

・・・・・

 

屋内または雨除けハウスなどから屋外での栽培に切り替えるうえで重要なテクニックの1つに

「順化」というものがあります。

 

これは

【環境変化が少ない場所・栽培方法】→【環境変化が大きい場所・栽培方法】

に移動・変更するときに行います。

 

トマトを例に順化を説明します。

 

①雨除けのハウスで種からポット苗まで育てる

(トマトの種には産毛が生えてます)

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②1日程度水やりを止める

環境が激しく変わる前に水を与えず、植物にとって厳しい状態にあえて追い込みます。

あえて厳しい状況にすることから順化を英語ではハードニングといいます。

 

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③より大きくするため、よく日が当たる畑に植える

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順化といってもこの場合は水をあげなかっただけです。

もちろん晴天の日にやると1日で植物がダメになるので(枯死する)農家の方は曇りの日に順化をして植えます。

 

園芸の教科書や雑誌などはここまでしかかいておりませんが、このブログではこのメカニズムを簡易的に説明します。

 

・・・・

 

植物がストレスのある状況(トマトの例では水が吸えないストレス)に陥ると

活性酸素種(H₂O₂など)を発生させます。

 

活性酸素種は細胞膜やDNAなどを損傷させる働きがあり、細胞内で過剰に増えすぎると

最終的に細胞死がおこります。その結果、葉の一部または全体が枯れたりすることがあります。

 

その活性酸素種を取り除くために、抗酸化物質(カロテノイド、ポリフェノール etc.)抗酸化酵素(SOD, APX, MDHA etc.)で植物の細胞も応戦します。

 

順化を行うことで抗酸化物質の量を増やしたり、抗酸化酵素活性を高めることができます。(抗酸化物質による活性酸素を除去するメカニズムはここでは割愛します。)

 

・・・・

 

要するに、急激にストレスがかかる環境(強い直射日光、急激な高温、乾燥、過湿)に多肉植物を移動させると、葉焼けなどのトラブルがおこります。

(人間でも職場や家が変わったりするとストレスを感じますよね・・・(*‘∀‘))

 

したがって、

日陰

遮光(直射日光を当てずに光をある程度さえぎること)

直射日光

 

の順で、順化させると葉焼けなどの光ストレスによる生理障害は回避できると思います。

 

そのため、この時期(梅雨)は低温で、直射日光が当たらない日が続き、ある日を境に高温・強光度の光に晒されます(梅雨明け)。梅雨明けは葉焼けなどが起きやすい環境が整うので、天気を見ながら多肉植物の管理をおこなってください。

 

↓こういったもので直射日光を遮るといいと思います。

シンセイ 遮光ネット 遮光率75% 2m×10m

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本日の参考文献

・水ストレスによる抗酸化酵素活性向上

 ・トマトの抗酸化物質