冬に起こる脱水ストレスと凍結ストレス
今回は脱水ストレスと凍結ストレスについて簡単にまとめます。
実はこの脱水と凍結は冬場に起こっていることもわかりました(「凍結」というくらいなので、当然、冬場です)。
光、温度、過湿や重金属ストレスなど、植物を取り巻く環境にはさまざまストレスがあります。脱水ストレスと凍結ストレスは似た現象であることがわかったので、まとめることにしました。
ストレスの種類
1つの項目を詳しく説明するときりがなくなるので、箇条書きでストレスをまとます。
- 高温ストレス:気温が高くなりすぎるストレス
- 低温ストレス:気温が低くなりすぎるストレス
- 光ストレス:光の強弱で感じるストレス
- 過湿ストレス:周囲の湿度が高すぎる場合と根の周りに水がありすぎる場合で感じるストレス
- 嫌気ストレス:根から酸素が吸えないストレス
- 脱水ストレス:水が吸えないと感じるストレス
- 塩ストレス:NaClにより感じるストレス
- 重金属ストレス:Cd、CuやPbなどによるストレス
- 凍結ストレス:細胞が凍るストレス
繰り返しになりますが、今回、フォーカスするのは脱水ストレスと凍結ストレスです。では、なぜ、脱水ストレスと凍結ストレスが似ているのか説明していきます。
水が吸えないとは
脱水または凍結によって水が吸えない状況は異なりますが、植物で起こっているのは
「水が吸えない」ということです。
水が吸えないと水ポテンシャルの低下(水を吸い上げる力)、溶質の蓄積、保護タンパク(恐らく、抗酸化酵素またはAFP)
乾燥ストレス
短期的な対応→気孔を閉じる
長期的な対応→根の生長比率増加、貯蔵水分量の増加、クチクラ層の肥厚
なので作物の場合、長期的なストレスは光合成産物を作物の可食部ではなく、根に使用している、と言い換えることができる(根菜類を除く)。
脱水の回避
→溶質の蓄積、細胞壁の肥厚化
低温ストレス
低温ストレス(cold stress)は二つに分けられる
1.Chilling stress:通常の生育条件より低い温度の時にかかるストレス。細胞の凍結には不十分な温度。膜間のイオンの移動ができなくなることで、膜からイオンが漏れる(←あるオルガネラにイオンが溜まりすぎて破裂するってこと?)
2.Freezing stress
本質的には脱水と同じであるが、脱水が起きた後に、細胞の崩壊が起る。細胞の外側の空間(恐らくアポプラスト画分)が凍結する。凍結ストレスがかかると細胞質にプロリン(浸透圧を調整するアミノ酸。高濃度に蓄積されても他の生合成や酵素活性などを阻害しない。)を蓄積する。水が不足している状況でも同じようにプロリンが蓄積される。
わかっていないこと
植物が凍るためには氷の核が必要で、植物の表面に存在する微生物が核になことがわかっていますが、それだけでは植物が凍るには説明が不十分なのでさらなる研究が必要。
参考文献
Paul E. Verslues et al., (2006) Methods and concepts in quantifying resistance to drought,salt and freezing, abiotic stresses that affect plant water statusThe Plant Journal 45, 523–539