植物を科学する

植物に関する科学的な知見の解説および論文紹介

「若緑(ワカミドリ)」を科学する

 

だいぶ寒くなってまいりました。皆様いかがお過ごしでしょうか?

 

私はそろそろ多肉植物の移動準備を考えており、早くも面倒臭ささに押しつぶされそうです_(´ཀ`」 ∠)_

 

話は変わりますが、本ブログもそろそろ50記事に達するので、50記事到達後は過去記事のアップデートを行っていきます。お楽しみに。

 

では、今回は「若緑」を科学します。 

https://www.instagram.com/p/B3buURxldfZ/

手のひらの手間にあるとげとげした奴が若緑。ちなみに、植える場所がなかったので、ゴムの木を植えてる鉢にカットして突き刺しました(笑)

 

 

 

 

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概要

学名:Crassula lycopodioides

和名:若緑(ワカミドリ)

英名:Rattail crassula, Watch chain, Lizard's tail, Zipper plant, Toy Cypress, Whip Cord, Club Moss Crassula, Princess Pine

 

http://www.llifle.com/Encyclopedia/SUCCULENTS/Family/Crassulaceae/26743/Crassula_lycopodioides

 

多肉植物光合成研究

若緑はCAM(crassulacean-acid-metabolism)型光合成を行っており、CAMのメカニズム解明の材料として使われて使われているようです。光合成は正直、あまり詳しくないので、かいつまんで言うと、若緑はCAMの中でもC3やC4に近い方式で光合成をおこなっている、とだけ言っておきます。

 

WERNER B. HERPPICH* and KLAUS PECKMANN. 2000. In¯uence of Drought on Mitochondrial Activity, Photosynthesis, Nocturnal Acid Accumulation and Water Relations in the CAM Plants Prenia sladeniana (ME-type) and Crassula lycopodioides (PEPCK-type). Annals of Botany 86: 611-620
 

影という「アート」

東京工科大学が行った研究では、若緑を含む、4種の多肉植物に光を投影して、影が人にもらたらす影響を調査しています。定量的な結果は何も報告されていませんでしたが、面白い調査だと思いました。非科学的ですが、私も植物がつくる影には幻想的なものを感じます。下の写真は私の部屋でモンステラなどにLED照明を投影したものです。こんなこと言い始めたら、科学もくそもないんですが・・・

https://www.instagram.com/p/ByxapeNlbPy/

夜の植物🌙いつもの部屋がライト1つで様変わり。進化の果てに変化した葉が美しくみえると思いました🌱モンステラの葉は、葉として分化した時点でDNAの塩基配列により型がすでに決定してしまってるそうです。モンステラ特有の葉の裂け目は強風で葉が折れない為だとか、諸説あるそうですが、理由はハッキリしていないようです。#夜の植物 #モンステラ #monstera #ライト #light #進化 #dna #塩基配列 #観葉植物インテリア

 

芸術を定量表現した科学と芸術の中間の研究は非常に興味深いです。

 

Sato, Miho Wakabayashi, Naoki. 2006. Research on the expression of the shadow for interactive contents. THE 53rd ANNUAL CONFERENCE OF JSSD.

 

科学論文で多肉植物の情報収集

今回は少し脱線して、「自分でも多肉植物のこともっと知りたい!」

という方向けに英語論文を使って、勉強する方法をまとめました。

 

趣味家向けのサイトだと正直にいって、情報が誤っていることがあるので、より精度が高い情報を収集する方にはおすすめです。

 

 

グーグルスカラー

 

別の記事 ↓ でも少し、書きましたが

 

botanist123.hatenablog.com

 

私が論文を調べるときに使っているサイトは

「グーグルスカラー」です。

 

f:id:botanist123:20191010182323p:plain

 

「グーグルスカラー」と検索すれば検索ブラウザに飛べます。

 

「グーグルスカラー」を使えば基本的に世界中の論文にアクセスできます。

 

日本語で検索すれば、日本で研究された研究結果がヒットします。

もちろん多肉植物だけではなく様々なジャンルの論文を閲覧することができます。 

 

英語で検索すると有料のものと無料のものがあります。

有料のものは論文が掲載されている雑誌のリンクに飛んで、購入またはレンタルすることで読むことができます。

 

 

論文の構成

論文は概ね以下の構成で書かれています。

・Abstarct(要約)

・Introduction(導入)

・Material and Method(材料および方法)

・Result(結果)

・Discussion(考察)

(・Conclusion(結論)研究者によっては結論を書かれている方もたまにいます

 

 それぞれの節について簡単に説明します。

Abstarct:アブストラク

 文字通り論文の要約が書かれています。本文に続く内容を非常にコンパクトにまとめてあるので、実験の細かい手法などを知りたい場合にはAbstarctだけでは情報が不十分です。

Introduction:イントロダクション

 研究するに至った経緯が書かれています。主に過去の研究を時系列でまとめており、Introductionの後半は現在わかっていないことに対してどのようにアプローチしていくかをまとめています。「Introduction」のセクションがないまま説明に入っている論文もあります。

Material and Method

 その実験で使った材料と方法が書かれています。「材料」と言われると、料理のレシピみたいに、「豚肉100g、しょう油10cc、コショウ少々・・」を思い浮かべるかもしれませんが、まさに料理のレシピのように細かく書かれています。多肉植物を例にすると、「『金の生る木』をOOの研究所でO月に播種して・・・」「葉10gを液体窒素で凍らせて、磨砕した後、フィルターで濾過したものを遠心分離して・・・」といったようにかなり具体的に書かれています。論文や雑誌にょってはかなり端折って書かれている場合もあります。得られたデータの統計処理の記載もあります。

Result

 「Material and Method」で行った、方法で得られた結果が書かれています。グラフや表があるので、グラフの軸や表のカテゴリーを見ると内容を読まなくてもどんな実験を行ったか、大方の予想ができます。

Discussion

 実験結果をもとに行われた考察が書かれています。結果の信頼性を評価するために先行研究との比較が行われます。過去の研究結果では「OOOという結果が出ており、本研究結果とも一致する・・・」などと、データの信頼性の述べるパートです。

 Discussionの終盤では今後の実験の展望を述べて、論文を締めくくるパターンが多いようです。例えば「今回の研究ではOOOまでは明らかになったが、OOOについては今後の研究課題とする・・・」のような感じです。

 

 論文の読み方

結論からいうと

①Result(結果)

②Material and Method(材料および方法)

③Introduction(導入)

④Discassion(考察)

⑤Abstarct(要約)

の順で私は読むことが多いです。

 

 

 初学者にありがちなミスは、Abstarctからいきなり読んでしまうことです。

Abstarctは確かに要約が書かれていますが、内容がコンパクトにまとまりすぎてよくわかりません。

もちろん、読む論文の先行研究を一通り読破されている方には、Abstarctで十分かもしれません。

 「よし!初めからきちんと読むぞ!」と意気込んだり、非常に真面目な方はAbstarctから論文を読むと挫折の原因になります。事実、私もそうでした。精読すべき論文と、多読が必要な論文をきちんと分けて読むことが勉強の早道です。

 しかし、ある程度論文を読みこなせるようになるまでは英単語サイトと教科書・専門用語の理解は必須です。避けられません。

 

どこまで調べる? 

結論はいたってシンプル。

「自分が納得するまで調べ続ける」

 

「わかる」には際限がありません。

 

たとえば

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植物の葉っぱはなぜ緑なのか?

葉緑体がみどりだから。→じゃあなんで、葉緑体は緑なの?

クロロフィルという緑の色素があるから。→じゃあなんで、緑の色素が多いの?

・・・・

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のように、落としどころはご自身で決めるのが、よいと思います。

 

とは言っても、「どう調べたらいいのかわからん!」

という方も多いとおもいます。

 

どうやって調べる?

こちらも結論はシンプル。

「わからない用語を調べる」のループです。

たとえば、「光合成

で検索すると、関連する用語に

葉緑体ストロマ、ラメラ、クロロフィルa,b、光呼吸、Zスキーム、明反応、暗反応」

なんかが出てくると思います。それをご自身が納得するまで調べ続ければよいと思います。学問には王道なしですw

 

論文で調べる

今回は論文をテーマにお話ししてるので、論文を使って、調べる方法にも触れておきます。実際にグーグルスカラーを使って、多肉植物の「若緑」を調べていることにします。

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検索結果からもわかるように、意図していない論文がヒットしています。

なので、やはりおすすめは学名検索です。「若緑 学名」で検索して学名で論文検索するのがいいと思います。若緑の学名は「Crassula lycopodioides var. pseudolycopodioides」のようですが、変種なのでいい感じに検索できませんでした。なので、種名の「Crassula lycopodioides 」で検索します。

 

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そしたら、いい感じにヒットしました。

論文のタイトル、または論文中に名前が出てくる論文が検索結果に出てきました。

 

ちなみに、若緑はこんなやつ ↓

https://www.instagram.com/p/B3buURxldfZ/

 

 

 

 

多肉植物は夜中に水分補給する

Amazonで買ったNewPCのセットアップなどなどでずいぶん更新が遅くなってしましました。ちょこっとだけ論文を読んだので、報告しておきます。

 

過酷な環境で生育してきた多肉植物はどうやら夜に水分補給をしているようです。

 

多肉植物光合成の過程で夜間に細胞内の溶質を濃くすることで、水を吸いやすくしているようです。細胞内の溶質というのはリンゴ酸などで、CAM植物特有の光合成の過程で作られるものです。

von Willert DJ, Eller BM, Werger MJA, Brinckmann E, Ihlenfeldt HD. 1992. Life strategies of succulents in deserts. With special reference to the Namib desert. Cambridge Studies in Ecology. Cambridge: Cambridge University Press.

 

ただし、CAMサイクリングという特殊な光合成(CAM型合成ではなく、多肉植物以外の多くの植物が行うC3型光合成に変化すること)をする場合を除きます。

 

これに関しては過去のブログで書いているのでご参照ください。

 

botanist123.hatenablog.com

 

「銀波錦(ギンパニシキ)」を科学する

最近はドラクエウォークにハマって、夜な夜な歩きまわっています。おかげで2kg体重が落ちました。

 

さて、今回は「銀波錦」を科学します。

https://www.instagram.com/p/B3CQFgklQ_y/

 

 

 

概要

学名 :Cotyledon undulata

属  :コチドレン(cotyledon)

和名 :銀波錦

原産 :南アフリカ

高さ :30~50cm

生育期:春、秋

 

葉の先端がフリルのようにうねっているのが特徴。葉に粉(ブルームのようなもの)がついています。銀の葉のように見えるので、「銀『葉』錦」とずっと勘違いしてました。

 

銀波錦の研究 

さて、いつものようにグーグルスカラー様で検索しようと思いましたが、それらしい文献が出てきません。

 

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いつもお世話になっております。グーグルスカラー

学名で検索しても研究材料として使われた形跡がないようです。もちろん、和名で検索してもヒットしませんでした。

こういうマイナーな植物では研究されていないことはざらにあるので、資金力と研究設備が整っている方は研究してみてください(他人事)。

 

その代わりに海外のサイトで、栽培方法について纏められているサイトを見つけたのでご参照ください。

https://candidegardening.com/ZA/plants/eaabf98455d9bdfef9c454fdb2cdbd6e

 

 

 

まだまだ、植物の世界は奥が深い・・・(´・ω・`)

 

引用

NHK趣味の園芸ガーデニング21 多肉植物 ユニークな形と色を楽しむ

多肉植物の種類ーグラプトペタルム属

 

今回はグラプトペタルム属についてご紹介します。

インスタとかでは「グラプトペタルム」という名前を見かけないような気がします。 

 

代表的なグラプトペタルム属の育てについて記載しておきます。

左がブロンズ姫。右はエケベリア。 

https://www.instagram.com/p/B29Mx-blA-L/

 

 

 

栽培環境は西日本の平地を想定。

水やりはブロンズ姫に準じております。

※他のグラプトペタルム属では異なる場合があります。

 

栽培難易度:★★★☆☆

水やり:梅雨明け~9月上旬;週2回、(大きく育てたい場合:2日に一回)

    9月上旬~12月;週1回

    12月~3月;屋外管理可

    3月~梅雨;;週1回

花冠:五枚の合弁花

花期:3~5月

耐乾性:★★★★★

耐寒性:★★★★☆

水はけ不良などで根腐れを起こすことがあるので、水はけの良い土を選びましょう

https://greensnap.jp/category1/succulent/botany/513/growth

 

botanist123.hatenablog.com

 

 

ホームセンターや100均などで買える品種

・ブロンズ姫

・朧月

・‘デビー‘

 

など

 

育て方以外の豆知識や科学的な知見は過去ブログをご参照ください。

 

 

botanist123.hatenablog.com

 

「朧月(オボロヅキ)」を科学する

今回は「朧月(オボロヅキ)」を科学します。

 

論文で全く知らない分野にぶち当たると心が折れそうになります。でも最近、多少、アクセスが増えつつあるので、頑張ります。。。(´・ω・`)=3

 

 

 

概要 

和名:朧月(オボロヅキ)

学名:Graptopetalum paraguayense

原産:メキシコ

 

最近では、グラパラリーフという名前で食用としても売られているようです。

・https://greensnap.jp/article/185

NHK趣味のガーデニング21 多肉植物 ユニークな形と色を楽しむ 

 

ちなみにブロンズ姫は朧月の園芸品種だそうです。

https://www.instagram.com/p/BzNe8e3Fhts/

 

左のちっこいのがブロンズ姫

 

ストレス耐性

食物化学の雑誌に掲載された2004年に中国の研究機関が行った研究によると

抗酸化酵素の研究もなされているようです。

・Studies on the antioxidative activity of Graptopetalum paraguayense E. Walther

 

植物生理学の実験材料

細胞壁の構造に関与する材料の研究(ミクロフィブリルなど)やCAM植物の乾燥耐性に関与する生理学的研究(液胞膜に存在する水の輸送に関わるタンパク質)などの実験材料として使われているそうです。

 材料にした背景は書かれていませんでしたが、恐らく、増やすのが簡単(葉挿しが楽)なCAM植物だからだと思います。

 ・Reorganization of cortical microtubules and cellulose deposition during leaf formation in Graptopetalum paraguayense 

・水輸送に関わるタンパク質の研究

 

食材:野菜

なんと、朧月は食材としても利用されているようです。中国の大学の研究によると、血糖値を下げる効果や、肝臓の不調改善、利尿作用、抗酸化作用があることが明らかにされています。なので、アンチエイジングも期待できそうです。

・Antioxidant properties of Lactobacillus-fermented and non-fermented Graptopetalum paraguayense E. Walther at different stages of maturity

 

 

多肉植物の種類 クラッスラ属

 

今回はクラッスラ属についてご紹介します。

 

 

 

代表的なクラッスラ属の育てについて記載しておきます。

 

写真は「金のなる木」です。

 

https://www.instagram.com/p/B2rHJ1klCME/

埃かぶってる・・・

 

栽培環境は西日本の平地を想定。

水やりは金のなる木に準じております。

※他のクラッスラ属では異なる場合があります。

 

栽培難易度:★★☆☆☆

水やり:梅雨明け~9月上旬;週2回、(大きく育てたい場合:2日に一回)

    9月上旬~12月;週1回

    12月~3月;屋内管理(低温により、葉が凍る可能性があるため)

    3月~梅雨;;週1回

花冠:五枚の小型合弁花(合弁花:花びらがくっついているタイプのもの)

花季:2~3月

ホームセンターや100均などで買える品種

・ゴーラム

舞乙

・星の王子

・若緑

・火祭り

など

 

育て方以外の豆知識や科学的な知見は過去ブログをご参照ください。

 

botanist123.hatenablog.com